僕の生きる道

ep.2 読まなかった本

时长: / 首播:2003-01-14
 中村秀雄(草なぎ剛)は秋本みどり(矢田亜希子)と2人きりになってしまった。途端に気まずい空気。「あのことは忘れてください」。秀雄は先日、強引にキスしたことを詫びた。「どうしてあんなことしたんですか?」秀雄がためらっていると、教頭の古田進助(浅野和之)が姿を現し、みどりは職員室を出ていった。
 秀雄は放課後、進路相談で教え子の赤坂栞(上野なつひ)と向き合っていた。栞の偏差値では第一志望校は難しかった。本人もそのことは認識していたので、自ら久保勝(谷原章介)に数学の補習授業に出席させてほしいと志願していた。「志望校のレベルを落とすなんて、自分が許せません」。必死な栞に向かってずっと話を聞いていた秀雄は言った。「バカじゃないの。たかが大学受験ですよ。あと1年じゃ無理です」。栞は絶句した。
 「母親からクレームがきたんですよ」。栞の一件はすぐに古田の耳に届いた。けれど秀雄は謝るどころか「生徒の事を思って怒っているのではなく僕の上司として責任取るのが嫌なだけですよね」と言い切り、本心を見透かされた古田は反論できなかった。
 その夜、秀雄は同僚たちに誘われて居酒屋にくりだした。「中村先生、言うときは言うのね」。英語の太田麗子(森下愛子)も体育の赤井貞夫(菊池均也)も社会科の岡田力(鳥羽 潤)も秀雄の変身ぶりをもちあげた。
 心地よく酔っぱらって部屋に帰った秀雄はそのまま布団にもぐり込み、夢を見た。
 子供の頃よく行った教会。誰かの葬儀だ。棺の中をのぞくと自分が横たわっていた。
 秀雄はハッと目覚め、時計の刻む音に恐怖を覚えた。
 翌日、秀雄は授業中に腹部に痛みを感じた。「あとは自習にします」。杉田めぐみ(綾瀬はるか)以外の生徒は何も気づかない。「具合が悪いのは昨日飲みすぎたせいですよね。楽しく飲むのはいいけど授業に差し支えるのはどうかと思います」。みどりの言葉に秀雄は傷ついたが、本当のことを話すわけにいかなかった。
 秀雄はATMで百万円をおろすと、高級中華料理店で豪勢なディナーを1人きりで堪能した。ふと奥をのぞくと、秋本理事長(大杉漣)がテーブルを囲んでいる。久保は周りの教師からもみどりの結婚相手、そして将来の理事長候補と目されている男だ。つまりお見合いみたいなものか。「あっちのテーブルの会計も一緒に払います」。秀雄はお釣りも受け取らず店を出た。
 秀雄の豪遊ぶりは毎夜続いた。タクシーを借りきって深夜のドライブや銀座のクラブ。「楽しい?」とホステスに聞かれ「楽しい」と答えた秀雄だったが、心の底から気持ちが晴れるはずがなかった。
 秀雄が本心をぶつけられる相手は主治医の金田勉三(小日向文世)しかいなかった。「何の痛みも感じないまま、ラクにしてください」。秀雄は訴えたが、金田は冷静だった。「このまま少し入院しましょうか」。しかし看護婦の目を離した隙に秀雄は病院を抜けだした。
 行くあてなどない。もうお金はいらない。財布に残っていた全てのお金を街頭募金の箱に入れ、ふと目についた教会に入ると、聖歌隊が合唱の練習をしていた。一緒に歌っているうちに秀雄はいつしか穏やかな笑みを浮かべ、気づいたら崖に立っていた。迷いも心残りもなかった。秀雄は両手を大きく広げてジャンプした──。

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