僕の生きる道

ep.9 一枚の写真

时长: / 首播:2003-03-04
 「僕たち、無事結婚式を挙げることができました」。職員室で同僚教師たちに挨拶する秀雄(草なぎ剛)とみどり(矢田亜希子)の薬指には結婚指輪が光っていた。結婚式では写真は撮らなかった。「あとに残すためのものですから」。赤井(菊池均也)と岡田(鳥羽 潤)は首をかしげたが、古田教頭(浅野和之)から秀雄の病気を教えられてショックに打ちのめされた。
 「結婚しました。相手はみどり先生です」。秀雄は3年G組の生徒たちにも報告した。拍手してくれたのはめぐみ(綾瀬はるか)だけ。つられて他の生徒たちも拍手してくれたが、どの顔も驚きを隠しきれない。「似合ってるよ、中村とみどり先生」。秀雄が教室を出ていってから、生徒たちは2人の結婚を祝した。いつしか秀雄は生徒から愛される教師になっていた。放課後の合唱もにぎやかになってきた。めぐみと守(藤間宇宙)だけだったのに、りな(浅見れいな)、雅人(市原隼人)、萌(鈴木葉月)、愛華(岩崎杏里)が加わった。「続けるかどうかは分かんないよ」。そう言いつつも秀雄の指揮とみどりの演奏に合わせて、6人は楽しそうに歌いだした。
 「僕たちは死にむけて決めなきゃいけないこともありますから」。秀雄は金田医師(小日向文世)に遺影のことを相談した。「どっちでもいいんじゃないの」。金田ははぐらかせたが、秀雄は1人で写真館に向かった。しかしいざカメラの前に座ると戸惑った。「今日はやめておきます」。人生最後の写真だからステキな顔で写りたかった。
 秋本(大杉 漣)が祝儀袋をもって秀雄の部屋にやって来た。みどりの作った手巻き寿司を3人で食べた。「良かったらウチで一緒に暮らさない?」。帰り道、秋本はそう言ってくれたが、秀雄はみどりが再婚する日のことを考えていた。「たとえ短期間でも、僕はあのウチには住まない方がいいんじゃないかって」。秀雄の気持ちは秋本に伝わった。
 秀雄が合唱コンクールへの出場を生徒達に提案すると、均(内 博貴)がくってかかった。「合唱に何の意味があるんですか?」。均はひたすら受験勉強に打ち込んでいた。合唱なんか時間の無駄だと、その表情が物語っていた。秀雄は決められたレールの上の人生を例にとった。「その道には自分の足跡が残らない気がします。将来を考えて生きる事も大切だけど、その時その時もしっかり生きてほしいんです」。生徒たちはじっと秀雄の言葉に聞き入った。ただ1人、均だけは自分の勉強に戻った。
 「もう片づけようと思って」。秀雄はビデオ日記をやめることにした。「僕はもうちゃんと足跡をつけて歩いてますから」。みどりは賛成したが、秀雄がこれまで撮ったビデオも処分すると言いだして複雑な気分になった。2人一緒の写真1枚すらないのだ。
 雅人の母親でPTA会長の久美子(銀粉蝶)が父兄たちを引き連れて乗り込んできた。「今の時期、受験より大切なことなんてないはずです」。合唱のことで一部の父兄からクレームが出ていることは、秀雄の耳にも届いていた。「高校生活はそれだけじゃないはずです」。しかし久美子は強硬だった。「合唱部は廃止すべきです」。
 久美子は体育館にも姿を現した。「合唱部は解散よ。たった今、先生に話をつけてきたから」。生徒たちの間に動揺が走った。その頃、秀雄とみどりは古田教頭に合唱の継続を訴えていた。「君の気持ちはよく分かるが」。古田も辛い立場にいた。「合唱を通じて生徒に伝えたいことがあるんです!」。その時秀雄が突然倒れた。「しっかりして!」「救急車、呼ぼう」。救急隊員に運ばれていく秀雄の姿に雅人と栞(上野なつひ)が気づいた。開けっ放しの職員室のドアから、取り乱した岡田の声が聞こえた。「まだ死なないですよね!」。

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