「その声には、応えてはいけません」ザワザワと私に語りかけてくる“声”のことを打ち明けたとたん、穏やかだったオボロの表情が険しくなった。「英雄祭―この時期に、あなたがここにいる。それは必然かも知れない」え?あの声と英雄祭と私の間に、一体何の関係があるというの?―三年前に起きた故郷消失事件により居場所も記憶も失い、“森の魔女”と恐れられながら生きてきた少女リッカ。百年に一度の英雄祭に沸くルチルの街で行き倒れ、無骨な傭兵カノンと穏和な唱術士オボロに助けられた日から、彼女の運命は劇的な展開をみせる。灰色の髪の乙女は救世の神子か、破滅の魔女か―壮大なる第19回ファンタジア長編小説大賞佳作受賞作。
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