信濃のコロンボ事件ファイル２　北国街道殺人事件 日剧

　長野県野尻湖で３年に一度訪れる渇水期に化石の発掘作業が行われた際、死後３年経った人間の大腿骨が発見された。その周辺からはバラバラになった各部の骨が見つかったが、頭蓋骨だけは見つからなかった。被害者の右の肋骨は２本欠けており、右の下腿骨には昔のものと思われる弾痕があった。
　長野県警捜査一課の警部補に昇進した「信濃のコロンボ」こと竹村岩男は、捜査本部に助っ人として呼ばれ、捜査に参加する。現場を訪れた竹村は、犯人が野尻湖に死体を埋めたことの意味を推理する。渇水湖である野尻湖に死体を埋めたのは、発掘により早く死体が見つかることを期待して埋めたはず…。しかし渇水期が３年に一度とは知らず、３年の時間が経過してしまったのではないか？また、頭を切り離したのは、本当の身許を隠すためだったのではないか？竹村はそう考えた。
　まもなく、白骨死体の身許が割れる。新潟五条病院の事務長･篠原が、その骨は自分の病院で３０年前に手術した、東都大学国文科教授･畑野高秀だと申し出たのだ。畑野が最後に退院したのは３年前の３月で、死体の死亡推定日時と一致した。
　竹村には気になることがあった。野尻湖で畑野の死体が発見された翌日、新潟県にある良寛ゆかりの国上寺の五合庵で、男の絞殺死体が発見されたのだった。被害者は神奈川県にある大学の教授･大沢健一で、やはり良寛の研究者だった。長野と新潟という近くで相次いで発見された死体は、共に良寛の研究者で大学教授。しかも、畑野の故郷･岩室村は五合庵のある出雲崎とすぐ近くだった。竹村のカンでは、この２つの事件に何か関連性があるように思えた。
　一方、大沢健一が殺された日の前日、死体が発見された五合庵で、大沢ともう一人の男が２人連れで歩いているのを目撃した人物がいた。それは卒業論文を書くため、良寛ゆかりの地を訪ねていた大学生の田尻風見子。風見子は同級生の野村良樹とともに論文のために五合庵を訪ねていて、大沢ともう一人の男の２人連れとすれ違っていたのだった。風見子は週刊誌を見て、自分が重要な事件の目撃者であることに気付く。風見子は大沢が「イナンがなぜ京都で死んだかということについては興味ある話があって…」と言っていたのを聞いていた。「以南」は良寛の自殺したと言われている父親の名前だった。恐怖感から警察に届けないまま旅を続ける風見子と良樹は、新信濃川の野積橋で何気なく海をバックにデジタルカメラで記念写真を撮る。その時、遠い河口に一隻の手漕ぎの小舟が出ていた。小舟に乗っている一人が、風見子たちに気付き、指さした。風見子は舟に向かって無邪気に手を振り返す…。しかし、その後２人は謎の男に車で尾行され、風見子は車を飛ばしてなんとか尾行を振り切る。風見子は何か犯人に不都合な物を撮影してしまったらしかった。
　五合庵で殺人事件の犯人を目撃した人物がいることを聞きつけた竹村は、野尻湖博物館の中で風見子と良樹を見つけ出す。風見子はデジタルカメラの記憶媒体であるメモリーカードを盗まれた直後だった。
　竹村は信頼する東京の刑事･岡部の協力を得て、自ら東京へ出て捜査をすすめる。畑野は２度結婚しており、最初の妻･雅代は１４年前に亡くなっていた。畑野と雅代の夫婦仲は既に冷え切っていたが、雅代が失踪した直後は畑野はいたく反省し、身許不明死体が発見されると、その都度確認に出かけていた。そしてある時、九州の霧島山系の樹海で雅代らしき自殺死体が発見され、畑野の供述によって雅代のものであることが断定されたのだった。雅代に掛けられていた保険金３千万円は、畑野が受け取ったという。そして、その畑野が死に、畑野に掛けられた１億５千万円の保険金を受け取ったのは、畑野の後妻･恭子だった。竹村は畑野が抱えていた多額の借金を返済するため、高級住宅街の家を売り、下町に引っ越している恭子を訪ねる。畑野は行方不明になる半年前に生命保険に加入しており、恭子はその保険を継続するため、苦しい生活の中で執念深く掛け金を払い続けていた事実も判明する。
　畑野高秀と２人の妻をめぐる多額の保険金…。そして一方、新潟の五合庵で殺された大沢健一の死体。畑野と大沢は２人とも良寛の研究者である大学教授…。２つの殺人事件にはどんな関係があるのか？竹村の中で何かが繋がり始めた時、新潟の寺泊の新信濃川河口で男の死体が引きあげられた。それは風見子と良樹が写真を撮ったところだった。体に重しをつけられ、顔を割られた無残な男の死体の身許は、東京にある小さな出版社の社長･谷永敏夫。畑野高秀や大沢健一の、良寛に関する研究本を出している出版社の社長だった。良寛に関係する人々が次々と殺されていくのは何故なのか？岩のように固い意思を持つ「信濃のコロンボ」竹村岩男がその謎に挑む！