伊東京乃

放課後、修一は屋上で佇む女性を見かける。
　夕暮れの街の景色を眺める。
　一見して美人だがどこか無機質な、冷たい感じのする化学の非常勤講師―伊東京乃。

　何故か周りからの干渉を避けたがる。
　エキゾチック。
　ミステリアス。
　彼女を形容する言葉。

　授業は分かりやすい。
　それは能力の現れ。
　しかし何故か非常勤講師に甘んじる。
　それが彼女のミステリアスな部分を更に強調していた。
　そんな彼女に興味を抱いた修一だったが、ことごとくかわされるだけだった。

　ある時、修一はある教師との行為の現場を目撃される。
　追いかけて捕まえた相手。
　非常勤講師――伊東京乃。
　修一は証拠の隠滅を図り、京乃を脅す。
　しかし、驚いたことに彼女は誰にもこのことは言わないと。
　他人にかかわり会いたくないのだと。
　そして、修一からは危険な香りがすると。
　そして京乃は修一の前から立ち去る。
　益々持って京乃が欲しくなる。
　逃げられると欲しくなる。
　まさしくハイエナ。
　だがしかし、今は手に入れる手段が見当たらなかった。

　そんなある日、修一はとある所から京乃との関係の取っ掛かりを手に入れる。
　その口の端はサディスティックに吊り上がり、残酷な暗い笑みを浮かべるのだった………。