#1 - 2021-4-14 23:56
无形弦波
RT,拆着玩(x 幼驯染过于清楚 好评 虽然估计还是很瑟(bgm38)

=== 園池桜子 ===
Ep.1
君「はぁはぁ……!!」
君「つ、疲れた……」
4限目の体育を終え昼休みに入る。
さっきまでずっと体育館でバスケをしていたので汗が止まらない。
桜子「はいコレ。スポーツドリンク」
君「あ、ありがとう桜子」
君「ゴクゴク……」
桜子「あ、もう。汗をすぐシャツで拭いちゃうんだから」
桜子「はい、ハンドタオル」
君「サンキュー」
適当に汗を拭こうとしたら即バレる。
何も言わなくてもすべてお見通しの俺たちのこの関係。
ここで腹を空かせようものならすぐに弁当が登場する勢いだ。
君「ゴホッ……! ゴホゴホッ……!」 
ドリンクでむせる。
桜子「もう、大丈夫? 落ち着いて飲んで?」
君「あ、ありがとう」
桜子に背中をさすってもらう。
ひぃぃ……! 嬉しいけどみんなが見てる教室のド真ん中でこれは恥ずかしい。
君「昨日は夜遅くまで勉強しててさ」
君「あんまり眠れなかったから流石に体育の時間はしんどくて」
桜子「と言いつつ、けっきょく明け方までゲームをしてたのだった。ね?」
バレてる。
君「そうだよ、認めよう。空が明るくなるまでゲーム三昧だったよ」
桜子「と見せかけて実は……」
桜子「あ、朝まで、その……え、エッチな動画を……」
やめろ、恥ずかしいなら自分から口にするな……!
君「勘弁してくれ。こっちはもう慣れてるけど、教室で何でも看破されるのは恥ずかしいんだぞ」
桜子「だ、だって、なんとなく顔見てればわかっちゃうんだもん」
恐ろしい……! 恐ろしいぞ俺の幼馴染みは……!
ツーカーの中もここまで来ると能力に等しい……!!

Ep.2
君「いいね、このカレンダーアプリすごく使いやすい」
桜子「でしょ? この間、お婆ちゃんにも教えてあげたの」
桜子「フォントも見やすいし、ラベルにスタンプも使えるんだよ?」
デートの最中、二人で海を眺めながらオススメのアプリ情報を交換し合う。
俺はただ二人で歩くデートも好きだけど……
こうして互いの考えを共有できる桜子との時間も、大好きだった。
君「それでさ、さっきから気になってたんだけどこの記号、何?」
桜子「え……?」
君「ほら、日付の下。丸とか三角とか、バツは少ないみたいだけど」
桜子「こ、これは……その……」
桜子「い、言わなきゃダメ……? かな……」
君「それはもう――」
君「是非聞かせてもらいたいね」
桜子「う、うぅ……あ、あの……あのね……? 絶対に笑わないでね……?」
桜子「……………」
桜子「ちゃんと、彼女できた日」
君「え?」
桜子「ほら、私たちって普段から一緒にいることに慣れちゃってるから……」
桜子「その、私もちゃんと彼女として頑張ろうって、もっと好きになってもらえるように頑張ろうって」
桜子「それで……」
桜子がアプリのメモ帳を開いて見せてくれる。
桜子「しばらくの間は、自分で決めたルールを守ろうと思って」
『自分から目をそらさないで1分間彼を見つめる』
『自分から手をつなぐ』
『自分からキスをする』←NEW
何このデイリーミッション!!
君「俺……」
君「まだ今日、桜子からキスしてもらってない」
桜子「そ、その……改めてそう言われちゃうと、しにくいというか……」
君「手も、まだ桜子のほうからつないでもらってない」
君「ということは、今日はまだ三角かな?」
桜子「か、顔が笑ってる……!! 黙っててもすごく顔が笑ってるの……!!」
君「あはは。桜子ってホントそういうところがめっちゃ可愛い」
君「超好き」
桜子「もう、知らないっ……」

Ep.3
君「もしもの話なんだけどさ」
桜子「……? どうしたの?」
君「俺が桜子に告白して、振られた場合のことを今考えてたんだけど」
桜子「な、何それ、そんな暗いもしもの話なんて考えなくていいよ……!」
君「あはは、いや俺たちだからこそだよ。今頃どうなってたのかなって」
桜子「コホン。じゃあいいよ、どうなってたか教えてあげる」
え?
君「わかった」
君「じゃあ好き。死ぬほど好きだから……」
君「付き合ってください」
桜子「ご、ごめんなさい……」
桜子「私、実は好きな人がちゃんといるの……」
桜子「ちゅっ……ン……」
桜子「えへへ……」
なぜキスした!? なぜ今キスした……!?
君「ダメだぞ桜子。ちゃんと俺のこと振らなきゃ」
桜子「えー、ちゃんと振ったよ?」
桜子「ごめんなさい。あなたとは一緒に手もつなげないし、デートもできないと思うの」
桜子「ちゅっ……」
桜子「私も好き。でも付き合えないの」
君「振る気ゼロだろ……! というか、いちいちキスするのは何の儀式!?」
桜子「えー、だ、だって……」
桜子「好きな人を前に振る方法なんて、いくら考えても……」
桜子「思いつきそうにないから」
さ、桜子ォォォォォォ……!!

=== 篠原小唄 ===
Ep.1
小唄「ちょっと、あご引いてくれる?」
君「こうかな?」
小唄「うん、そのくらい。ありがとっ」
日曜の昼下がり。
彼女に髪を切ってもらっている。
篠原さんがよく弟の髪を切っているという話から、俺の髪も切ってもらえることになったのだ。
その時は軽い気持ちでOKしたんだけど、いざこうして切ってもらっていると……めちゃくちゃ照れくさいな!?
小唄「どうしたの? いつもより口数が少ないみたいだけど」
君「いや、なんていうか……緊張しちゃって」
視界には入らないけど、すぐ近くに篠原さんを感じる。耳やうなじに時々、篠原さんの吐息がかかってこそばゆい。
けど、それを口に出して言うのは、なんだかためらわれる。
小唄「あっ……もしかして、素人に髪を切られるの、実は嫌だった?」
君「ううん」
君「全然全然」
君「突然ソフトツーブロック王道細束ナチュラルマッシュ刈り上げとか」
君「イケメンにしか許されない、スパイラルパーマミディアムウルフとかにされない限りは大丈夫だよ」
小唄「マッシュ刈り上げ? ウルフ?」
参考画像をスマホで篠原さんに見せる。
小唄「す、すごい……! オシャレだ。オシャレだけど、その……」
小唄「あ、あはは……何かが違う気がする……」
君「大丈夫。俺はこのまま、篠原さんの弟と同じ髪型になっても」
君「文句は言わないよ」
小唄「あらぁ? 私の弟の髪型に何か問題でもあるのかしら~?」
君「いえ、全然全然」
君「特に問題ないかと」
小唄「ふふっ、知ってるよ? それ、照れ隠しなんだもんね」
君「……………」
小唄「ふふっ、可愛いね」
は、恥ずかしい……!!
恥ずかしすぎるッ……!!
同級生の女子に可愛いなんて言われて……
何マジで顔赤くしてるんだ俺……!
小唄「任せて……? これでも男子の髪を切る自信はあるの」
小唄「弟を実験台にして、ちょくちょく私の腕も成長してるんだから」
君「わかる」
君「そして数年後、カリスマヘアアーティストとなって家計を支えてくれるんですね?」
小唄「ビックリ。私と結婚してくれる気なんてあるんだ」
小唄「あれ、急に耳まで赤くなってるけど?」
君「すみません」
小唄「はいはい、馬鹿なこと言ってないで次、前髪切るからね~?」
自分の彼女には当然ドキドキするが……
篠原さんには母親を前にした時のような安心感があるのは、なぜだろう。

Ep.2
君「篠原さん。今日のおやつは何円までですか?」
小唄「うーん」
小唄「10円ッ」
あの、それじゃ何も買えないんですけど……!?
小唄「今日はお好み焼き作ってあげるんだから。それがおやつみたいなものでしょ?」
君「お好み焼きって、おやつというより『メシ』に該当しない?」
君「ごはんごはん」
小唄「そ、そうかな。私の家じゃお母さんおやつにお好み焼き焼いてくれるんだけど……」
小唄「うん。というわけで今日のおやつはお好み焼きにします。決定です」
拒否権なし。
君「篠原さんって、やっぱり超家庭的だよね」
君「こう、主婦力が滲み出ているというか」
小唄「ゲームは1日1時間まで」
君「鬼!」
小唄「スマホも1日1時間までです」
君「悪魔!」
スマホでそれじゃホント何もできない。
小唄「ふふっ、冗談」
小唄「でも家計を任せてくれたら、それなりに頑張れる自信はあるよ?」
君「篠原さんの冗談って、妙に生々しくしてハラハラするよ」
君「ちなみに家計をあずけたら俺お小遣い制になる?」
小唄「うーん、どうだろう。多分そうなるかな?」
君「ちなみにいくら?」
小唄「多分……」
小唄「手取りの二割かな」
ああああ!! マジでリアル! ホントそれっぽい!!
君「ダイジョウブ」
君「ボク、ガンバッテ、ハタラクカラ」
小唄「あ、あはは……そんな、本当に結婚したらちゃんと困らせないようにするから」
君「わかってる」
君「俺、篠原さんのそういうところが好きになったんだから」
君「好き」
小唄「も、もう……何……? 急に……」
小唄「うん、そうだね。私も大好き」

Ep.3
小唄「ほら、こうすればタオルももっと入るし、クローゼットの中もスッキリするでしょ?」
君「おお~」
彼女が部屋に来て、いつものようにプチ収納術を披露してくれる。
このまま回数を重ねたら、こことんでもない利便性の部屋に生まれ変わるんじゃ……
小唄「ふふっ、何か言いたそうな目してるね」
君「あ、やっぱりわかる?」
君「じゃあ今こっちが言いたいこと当ててみて?」
小唄「えっとね……」
小唄「収納術はこれくらいでいいから」
小唄「早く私に甘えたい……かな……?」
君「正解」
小唄「いいよ。おいで?」
もう嫌だ。
幸せ過ぎて死ぬ。
小唄「はーい、よしよし」
小唄「ふふっ、今は二人きりだからね、遠慮はなし」
君「篠原さん、あ、あの……」
小唄「目、閉じて」
小唄「ちゅッ……ン……」
小唄「ふふっ、やっぱり」
君「……?」
小唄「キス、上手だね」
!?
君「いやいやいや……! そんなはずは……!」
君「だいたい俺、篠原さんとしかキスしたことないし」
小唄「うん、わかってるよ?」
小唄「ふふっ、やっぱり照れた顔が一番可愛いね。よしよし」
ママァァァァ!!

=== 秤結衣 ===
Ep.1
結衣「ハァハァ、イイっす……! イイっすねぇ……!!」
結衣「先輩、もう一回さっきのキメ顔……!!」
君「こ、こうか……?」
結衣「イイイイッす!! ハァハァ!! そのまま、そのまま……!!」
結衣「いやあ、先輩はホントそこそこのイケメンっすから、アプリで盛る必要ないトコがたまらないっすね!」
君「俺をイケメンなんて呼ぶのはお袋とお前だけだよ」
結衣「まあ『そこそこ』っすからね。どう撮ってもカッコいい被写体より撮りがいがあるっす」
君「褒められてるかどうか微妙になってきたな?」
結衣「世間のそこそこは『めちゃくちゃあたし好み』って言ったら、褒められてる気になるっすか?」
君「ズルいやつめ。もうちょっとだけ付き合ってやろう」
結衣「えへへ」
俺の撮影会と称して拘束されること30分。
この野郎。お前はいったい何枚、俺をスマホで撮れば気が済むんだ。
結衣「右斜め、うーん20度ちょいの先輩が一番好きっすねあたし」
君「右斜め30度の俺も愛してくれよ」
結衣「愛してます! 激推しっす。そうじゃなきゃこんなに先輩のこと撮ったりしないっすよ」
結衣「うんうん。もうちょっとアゴ引いて……そんでもうちょっと奥向いて……」
結衣「もうちょい!! あと30度!!」
君「ぐぇ……っ。人間の首の可動域超えてるんだが!?」
結衣「そこは気合でなんとか!! 正面の包容力と後ろ姿の哀愁を一枚の写真に納めたいんす!!」
君「ピカソのキュビズム絵画かよ」
結衣「あっ、先輩。いきなり難しいこと言うと泣いちゃいますよ」
それは困るなぁ。こいつに泣かれるのが俺は一番困る。
結衣「はい。というわけで次はこの帽子かぶってください」
君「ま、待て、マジでいつになったらこの撮影会は終わるんだ……!?」
結衣「うーん、あたしの気が済むまで?」
結衣「ありったけの先輩をこの512GBめいっぱいに詰め込んだら終わり!」
結衣「撮影は物量戦、ベストの一瞬を待つより一度でも多くシャッターを切れとプロも教えてるっす」
馬鹿だ。
こいつ本気で言ってるならマジで相当な可能性が……!
君「秤……いや、結衣」
結衣「はい、なんすかー?」
君「被写体の俺は、これからいつでもお前の隣にいるんだぞ?」
君「そんな野郎の姿形を、今そこまでして撮る理由がどこにある?」
結衣「そりゃもう、自慢するために」
はい?
君「自慢って? 今更、学校のみんなにか?」
結衣「そうっす。ま、学校と言っても――」
結衣「ほら」
何事かと結衣のスマホを見せてもらう。
な……! こ、これは……!!
君「他校の友達……!?」
結衣「潮鳴女学院(ナリジョ)の子達は常に恋バナに飢えてますからね」
結衣「彼氏自慢は千里を駆ける」
結衣「友達の友達はマブダチ。これ、世間の常識(って皆が言ってた)」
結衣「先輩、なかなか好評っすよ? なかなかっていうのは、そこそこより上って意味っす」
君「や、やめろ恥ずかしい……!! てかなんでこれだけ目ちょっとデカいんだよ……!!」
結衣「ああああ! ダメっす、消すのはナシナシ……!!」
君「いいか、逆の立場になって考えてみてくれ」
君「俺がお前を撮りまくって、他校の友達に自慢しまくってたらやっぱり恥ずかしいだろ?」
結衣「んー…………」
結衣「あ、あたし的にはむしろ、してほしい……みたいな?」
結衣「あたしが百枚撮って自慢したら先輩も一枚くらいは友達に自慢してくれるかも? 的な?」
結衣「かっ、彼女自慢も世間の常識っすよ!! マジで!!」
どこの常識だよマジで。

Ep.2
結衣「ちゅッ……ん、んんッ……ぁ……」
結衣「せ、せんぱい……」
よし。
君「勝った」
結衣「ええ……!? か、勝ったって何が……!?」
君「その小生意気な口もキスしてしまえば大人しくなるからな」
君「普段はお互いに馬鹿やってても、恋人としては俺のほうが勝ちってことで」
結衣「その理屈は全然わかんないっすけど……」
結衣「恋人としてはあたしが負けってことなら、認めてもいいっすよ……」
ん……?
結衣「だって、だって……」
結衣「ここ最近あたしはず~っと先輩のことだけ見てるのに、時々しか目が合わないから」
結衣「あたしばっかり、先輩に釘付けなんだなぁって」
君「……………」
結衣「……っ」
君「や、やめろッ……! 言ってて自分で恥ずかしくなるようなこと言うのはよせ!!」
君「つられて俺まで赤くなっただろ!?」
結衣「だ、だってぇ……!! だってぇ……!!」

Ep.3
結衣「10分経ったっす。次は右っす」
君「ん……?」
さっきまで俺の左側で腕を組んでいた結衣が、今度は右側に来る。
結衣「ふふーん、これでOKっす」
君「何がOKなのかさっぱりわからないんだが」
結衣「先輩の左腕に10分抱きついていたので、次は右腕をチャージしてるだけっすよ?」
君「ちゃ、チャージ……!? 『だけっすよ?』って、んな当然みたいに言われても」
結衣「愛のフル充電っす」
結衣「左右対称に先輩とスキンシップすることで、今夜の結衣ちゃんの安眠が約束されるっす」
君「なるほど」
君「じゃあ敢えて俺の右腕は渡せんな」
わざと右側に来た結衣を振りほどいてみる。今夜は俺のことを考えて悶々としてもらおう。
結衣「ああああ……!! 先輩のいじわる……!!」
結衣「……それならこっちにも考えがあるっすよ!」
君「ほう、面白い。どこからでもかかってくるがいい」
結衣「んじゃ遠慮なく正面からぎゅーっ」
君「うぉおおお!?」
結衣「はぁ……急速充電。やっぱこれが一番落ち着くっす」
俺の方は落ち着くどころの騒ぎじゃないんだけど。あらぬところが充電されてるんだけど。
結衣「いやー、先輩の右腕も左腕も大事っすけど」
結衣「先輩の真ん中を独り占めできるのはカノジョの特権っすからねー。むふー」
ううッ……!! 泣けてくる……!!
信じられるか。これ、本人は可愛いこと言ってる自覚ないんだぜ?

=== 夜舟初穂 ===
Ep.1
初穂「今日の授業中、窓の外を眺めながらずっとあなたのことを考えていました」
君「へ、へぇ……それは結構嬉しいかも。ちょっと照れるけど」
初穂「あなたと王様ゲームしてみたいなーって」
君「は?」
は?
初穂「偶然にもここにおみくじの筒があります。これを使ってしましょう。王様ゲームを」
君「『偶然にも』って、朝から準備してないと急に出てこないだろそんなの!?」
君「しかも今ここで!? そもそも王様ゲームって二人でするゲームじゃなくない!?」
君「てかそれ神社のやつ勝手にいじって怒られないかな!!?」
ボケの密度が高すぎてツッコミが追いつかない。
初穂「そこは大丈夫です。絶対怒られま……あ、いや、怒られ……おこ……」 
初穂「怒られます」
君「開き直った……」
初穂「誠心誠意謝って許されない過ちがこの世にありましょうか」
君「謝る前提で行動する時点で誠心誠意ちゃんが意識不明では?」
初穂「まず私から引きますね」
君「ねぇ話聞いて!? 窓の外じゃなくここにいる俺を想って!?」
初穂「やりました、王様です。さあ、あなたも引いてください」
君「王様が決まったなら引く意味ないのでは。二人なんだし……」
てか二人で王様ゲームって何? 何なの?
初穂「甘いですね。もしかすると私がズルをしていて、他のくじもすべて王様かもしれませんよ?」
なるほど、そういうことなら引く意味もあるのかもしれない。
出てきた棒に書かれていたのは――
君「わーい大吉だ」
初穂「いいなー」
君「ほんとに何なん!!?」
初穂「他には『皆勤賞』『二割引』『7ポイント』『中辛』などが入っています」
君「二人して『二割引』と『中辛』とか引いちゃったらどうするつもりだったんだ。いたたまれないでしょ」
初穂「……はて、考えたこともありませんでした」
君「だいたい皆勤賞ってクジから出てきても意味ないで賞筆頭でしょうが!!」
王様ゲームってどんなんだったっけ。こんなんじゃないことだけは確かな気がする。
初穂「王様なので命令しますね」
君「自由すぎる」
初穂「その大吉が欲しいので私の王様と交換してください」
君「アッ、ハイ」
初穂「……………」
なんだろうこの時間は。
初穂「……命令しないんですか?」
君「していいの?」
初穂「王様と大吉がちゅーするとか、口づけするとか、なんなら接吻でもいいです」
君「そんなにキスがしたいのか……」
初穂「俄然したいですね。なにせひねもすあなたのことを考えていたので」
初穂「潮鳴神社は縁結びの神社。私もあなたも今日の恋愛運は大吉です」
初穂「それとも……私とのキスはお嫌いですか?」
その質問は、ズルすぎる。

Ep.2
みけつ堂を訪ねると、初穂さんがカウンターに突っ伏していた。
具合でも悪いのかと慌てて駆け寄ると、すうすうと気持ちよさげな寝息を立てている。
どうやら俺を待っている間に眠ってしまったようだ。
初穂「ふぁ……」
君「あ、ごめん。起こしちゃったか?」
初穂「んぅ……おかえりなさい、“あなた”」
……違う!! 初穂さんの『あなた』の響きがなんかいつもと違う!!
なんていうか、人妻感がする。有り体に言うとえっちだ。
初穂「ごめんなさい、いつの間にか眠っちゃったみたい」
初穂「ところで、お帰りになったのにいつもの、やってくれないんですか……?」
君「いつものやつ……?」
初穂「もう……意地悪しないでください。あれって言ったら……あれ……?」
初穂「…………っ!!」
初穂さんは驚きに目を見開くと、傍らにあったハリセンでそのへんにあった狸の置物をひっぱたいた。
初穂「痛いですか? ……そうですか。それはすみません」
初穂「ふぅ……完全に目覚めました。どうやら夢じゃないようですね」
君「えっ、確かめ方、えっ。置物としゃべっ……えっ?」
俺のほうが夢でも見てるのかな。
初穂「……つい、まだ夢の中だと思ってしまいました。あんまり幸せな夢だったから」
君「どんな夢見てたんだよ」
初穂「な、内緒です」
君「もしかして夢の中では、俺が初穂さんの旦那さんだったり?」
初穂「うっ、どうしてそれを」
君「初穂さんが俺を呼ぶ時、そんな感じがしたから」
君「もっかい呼んでみてくれないかな。さっきみたいに甘い声で“あなた”って」
初穂「弱みを握った途端、ここぞとばかりにグイグイ来ますね」
君「いつものやつって何? 夢の中の俺は初穂さんにいつも何してんの?」
初穂「そんなことまで口走ったんですか私は!?」
君「聞きたいなー」
初穂「ほ、ほっぺにただいまのチューを……」
かわいいなおい。
君「ふぅん、ほっぺでいいんだ?」
初穂「ほっぺがいいんです! それ以上は、その、ごはん冷めちゃうじゃないですか」
つまり、ほっぺ以上なら向こう数時間放してくれるつもりはないと。やっぱりえっちだ。
初穂「うぅ……不覚をとったせいで思いっきり辱められた気がします。責任とってくれますよね、“あなた”?」
あー、早くお嫁さんにしたい。

Ep.3
初穂「手相占いが得意です」
君「フーン」
初穂「もっと驚いてください」
君「だって初穂さん見るからにそういうの得意そうじゃん。他の特技に比べたら意外性ないって言うか……」
初穂「『占ってみてよ』と言ってほしいです」
君「じゃ、じゃあ占ってみてよ……」
初穂「手を貸してください。両手とも」
君「こういうのってどっち見るか決まってるんじゃないっけ」
初穂「私が両方触りたいので」
初穂さんは俺の手をとり、なでたり揉んだり裏返したりする。
君「どうかな、俺の手相」
初穂「いつもこの手が、私の手を握ってくれてるんですよね。むにむに」
初穂「私のよりおっきくてあったかい。ほら、こんなに。もみもみ」
君「手相は……」
初穂「肌の感触だってこんなに違って、だけどほら、重ね合わせると吸い付くみたいに」
初穂「相性は抜群、と出ています。すりすり」
君「これ手相占いかなぁ。気持ちいいけど」
初穂「手相占いです。夜舟流手相占い」
やっぱり夜舟流だった。
初穂「あなたの手……ふふっ」
君「変な言い訳しなくても、手くらいいつでも触っていいのに」
初穂「それは……もしかして違法なのでは?」
君「同意の上ならばりばり合法ですが!?」
初穂「合法なんですか!? こんな……こんなにも多幸感が得られるのに!?」
君「言われてみたら違法な気がしてきた……こんな可愛い彼女が幸せそうに俺の手を握ってくれるなんて」
初穂「フフッ。背徳の味……ですね?」
そう言うと初穂さんは俺の指に深く指を絡める。俺もギュッと握り返す。
初穂「結婚線が感情線に近く、枝分かれしていない。生命線も太くて長いです」
初穂「早くに結婚して、一生健やかに添い遂げることでしょう」
こんなにぴったり手を重ねていたら手相なんて見えやしないはずだけど、なぜだろう、不思議と当たる気がする。
初穂「そうですよ? 的中率は100%です。あなたがこの手を放さないでいてくれるなら、ええ、きっと」