2024-2-25 03:31 /
少女漫画は昔からホラーと相性がよく、「死と彼女と僕」など名作を数多く生み出してる。
本作は少女漫画風の瞳の大きなキャラクターやリリカルな心理描写が特徴的で、少女漫画の系譜に入るのだろうが、素朴で可愛らしいタッチに騙されて読み進めると突然のホラー表現に冷や水を浴びせられる。
「死んでしまった彼氏が幽霊として現れる」滑り出しはありがちだが、そこからの展開が定石を外した目新しさ。
なんといっても主人公の優里がネジとんでる、というかぶっ壊れてる。
この作品で一番怖い、あるいは狂ってるのはだれか問われたら幽霊や怪異をさしおいて名前を挙げたいほど。
初めて男子に優しくされ妄想が止まらない→告白→彼氏になる→死んだ→彼氏にさわりたいから死のうという極端な思考回路もさることながら、彼居るが故に我在りな青野くんへの依存っぷりが凄まじい。
いくら彼氏に触りたいからってあっさり死ぬか、後に遺される友達や家族はどうでもいいのかとツッコミどころ満載だが、元々友人はおらず、家庭にも根深い問題を抱えてるとあらば、青野くんへの矢印の大きさも頷ける。
序盤は二人を中心にちょっと変わった恋愛ものになるかと思われたが、黒青野の存在や民俗学を盛り込んだ伝奇要素など、どんどんオカルト色が濃くなって先が読めない。
自己犠牲的な性格が強く、なにかあればすぐ死にそうな主人公の危なっかしさも相まってハラハラドキドキが続く。
ホラー面だけじゃなく、本作では人と人、人と人外のディスコミュニケーションを含む広範の人間関係がテーマとなる。
恋人、友人、家族……
本作に登場する対人関係はどれも機能不全に陥り、正常なコミュニケーションが成立しえない。
優里の助っ人となる同級生はひきこもりで家から出れず、本来居場所であるはずの家庭は歪み、極め付けに彼氏は死んでる。しかし優里と青野は決してめげず、瑞々しくも初々しい試行錯誤に創意工夫を持って、なんとかコミュニケーションを図ろうとする。これは周囲も同様で、ディスコミュニケーションをコミュニケーションに繋げるために、それぞれが対話なり努力なりをする。
この距離感の縮まりを丁寧に描写することによって自然と登場人物への愛着が湧くし、幸せになってほしくなる。
好き嫌いが分かれる点として言及するのは下ネタの多さ。
自分は耐性あるので楽しく読めたが、人によっては絵柄のギャップも作用して結構ドギツく感じるかもしれない。
黒青野が優里に憑依するシーンなど、おそらく意図的な演出だろうが、わざと性行為を匂わすエロティックな描き方をしている。ピュアなだけの少女漫画に終わらず、それなりに性描写も盛り込まれている。この手の絵柄でキス以上はちょっと……という人は注意。
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