可愛い子

「……仕方がないので、俺が教えて差し上げます」
初めての夜の街。
気が付けば、私はとある遊郭の格子の中にいた。
どうしてこんなことになってしまったのか分からない私は、籠の中でただ俯くばかり。
「買ってほしけりゃ、愛想を振りまけ」
遊び慣れた客が、そう捨て台詞を吐いて、目の前を通り過ぎていく。
――このままでは、私は死ぬまでここから出られない
そう思い、意を決して顔を上げる、と――。
目の前に驚いたような顔をした「弟」が立ちすくんで私を見下ろしていたのだった……。
ぞくりと凍る背筋。どうしてこんなところに「弟」がいるのか。
少し見ぬ間にまた背が伸びた「弟」は、口元だけで微笑むと私の前から去っていく。と思いきや。
「すみません。あの女を買いたいのですが……」
店の中へと案内される「弟」。

そのまま私は「弟」の相手を命ぜられ……。

【!!ご注意!!】
※ミステリーを意識した内容となっております。
下記記載の項目である、
共通のお話
「あっ、だめっ。やめてっ。……いっちゃいますから!!」
「そう……。俺の事、嫌いになっちゃったんですね」
には若干のネタバレが含まれますのでご注意ください!!

キャラクター
【藤堂蓮(とうどうれん)】東北名家である藤堂家の次代当主。若いながらもクールで知的。突然行方不明となった「姉さん」が遊郭にいると言う噂を聴き、探し回っていたところ、彼女と思わしき女が店先に座っていたのを見つけてしまう。

【ヒロイン】地方商社の元令嬢。何不自由のない暮らしをしていたがなぜか遊郭に売り飛ばされ遊女として働いている。