#1 - 2019-11-2 16:47
Xie3 Project (ねえ、心葉くん。いつか小説を書いてね。 ... ... ...)
俺は言葉が欲しいんじゃない。俺が欲しかったものは、確かにあった。
それはきっと、分かり合いたいとか、仲良くしたいとか、一緒にいたいとか、そういうことじゃない。俺はわかってもらいたいんじゃない。自分が理解されないことは知っているし、理解してほしいとも思わない。俺が求めているものはもっと過酷で残酷なものだ。俺はわかりたいのだ。わかりたい。知っていたい。知って安心したい。安らぎを得ていたい。わからないことはひどく怖いことだから。完全に理解したいだなんて、ひどく独善的で、独裁的で、傲慢な願いだ。本当に浅ましくておぞましい。そんな願望を抱いている自分が気持ち悪くて仕方がない。
けれど、もしも、もしもお互いがそう思えるのなら。
その醜い自己満足を押しつけ合うことができて、その傲慢さを許容できる関係性が存在するのなら。
手が届かない葡萄はきっと酸っぱいに違いない。
でも、嘘みたいに甘い果実なんかいらない。偽物の理解や欺瞞のある関係ならそんなものはいらない。
俺が欲しいのはその酸っぱい葡萄だ。
酸っぱくても、苦くても、不味くても、毒でしかなくても、そんなものは存在しなくても、手にすることができなくても、望むことすら許されなくても。
「それでも……」
いつの間にか出ていた声は、自分でも震えているのがわがった。
「それでも、俺は……」
嗚咽が漏れそうになるのを必至で飲み込む。声も言葉も一緒に飲み込んでしまいたかったのに、声も言葉も途切れ途切れに出て行ってしまう。歯の根がカチカチ鳴って、勝手に絞り出されていく。
「俺は、本物が欲しい」