ふしぎ工房症候群 朗読CD EPISODE1「君はダレ？」

日常に潜む些細で不可思議な出来事── あなたは「ふしぎ工房」を見つけることができるでしょうか? <物語> 僕は、彼女を失った。一年前、交通事故で最愛の彼女を失った僕は、生きる希望を失くしていた。 彼女のいない人生なんか考えられない──そんな思いを抱えたまま、ある時、家路を急いでいると、ふと見なれない看板を目にする。看板には「ふしぎ工房」と書いてある。 看板に誘われるように、ふらりとその工房に足を踏み入れた。中はがらんとした薄暗い空間が広がる他は、何もない店だった。ただひとつ、大机に座る謎の老人を除いては……。 老人は一言「ご注文は?」と僕に向かって言った。 なんて怪しい、うさん臭い店だ。「幸せを売っている」などと称して、どうせ宗教だの印鑑だのを売りつけるインチキな商売に決まっている。そうだ、ならば注文してやろうじゃないか。絶対無理なものを── 「彼女を生き返らせてほしい」僕は語気を強めて老人に注文した。 「承知しました、ではこの注文書にあなたのお名前と住所をお書き下さい」老人は平然と言った。 疲れ果てたように帰宅し、アパートの玄関の扉を開けた僕は、そこで信じられない光景を目にする。かつての恋人が自分の帰りを待っていた。 これは夢なのか……? それとも……