朝。通りを挟んだ向かいに建つ家の玄関の鍵を開けた。靴を脱いで家に上がり、迷わず階段を上る。
「ユウナ、起きてる? ユウナ?」
一つの部屋の前でノックと呼びかけを繰り返す。反応はない。僕はため息をついてドアを開けた。甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
部屋の奥に置かれたベッドの上には、金髪の女の子が横たわっていた。
朝日を浴びて黄金色に輝く長い髪と、整った顔立ちがあまりにも綺麗で、思わず触れるのを躊躇してしまう。
でも、僕にはやるべきことがある。意を決して少女が眠るベッドの脇まで歩み寄った。
「ユウナ、起きてよ。早くしないと学校に遅れちゃうよ?」
ゆさゆさ。呼びかけながら、少女の肩を軽く揺する。何百回となく繰り返された行為。
「んん……」
少女の眉が歪む。目覚めが近い。再び眠りにつく前に、一気呵成に起こしてしまおう。
「ユウナ、ユウナってば」
ゆさゆさ。パチリ。ユウナの目が開いた。
「…………」
霞のかかったうつろな瞳。やがてそれは徐々に焦点を結び、僕の姿を映し出す。そして……
「そんなに強く揺さぶったら、頭悪くなっちゃうじゃないッ!!」
「へれぶんっ!?」
寝起きであることを全く感じさせない鋭利な踵落としが、ベッドの上から僕の頭上に降り注いだ。
「お……おはよう、ユウナ……がくっ」
――今後も何百回と繰り返されるであろう行為。これが僕の……遊佐正宗朝の日課だった。
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「ユウナ、起きてる? ユウナ?」
一つの部屋の前でノックと呼びかけを繰り返す。反応はない。僕はため息をついてドアを開けた。甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
部屋の奥に置かれたベッドの上には、金髪の女の子が横たわっていた。
朝日を浴びて黄金色に輝く長い髪と、整った顔立ちがあまりにも綺麗で、思わず触れるのを躊躇してしまう。
でも、僕にはやるべきことがある。意を決して少女が眠るベッドの脇まで歩み寄った。
「ユウナ、起きてよ。早くしないと学校に遅れちゃうよ?」
ゆさゆさ。呼びかけながら、少女の肩を軽く揺する。何百回となく繰り返された行為。
「んん……」
少女の眉が歪む。目覚めが近い。再び眠りにつく前に、一気呵成に起こしてしまおう。
「ユウナ、ユウナってば」
ゆさゆさ。パチリ。ユウナの目が開いた。
「…………」
霞のかかったうつろな瞳。やがてそれは徐々に焦点を結び、僕の姿を映し出す。そして……
「そんなに強く揺さぶったら、頭悪くなっちゃうじゃないッ!!」
「へれぶんっ!?」
寝起きであることを全く感じさせない鋭利な踵落としが、ベッドの上から僕の頭上に降り注いだ。
「お……おはよう、ユウナ……がくっ」
――今後も何百回と繰り返されるであろう行為。これが僕の……遊佐正宗朝の日課だった。